島崎ともよ「おかしだけがおやつじゃない。」

おかしだけがおやつじゃない。
子どもにおすすめのおやつとは。

わたしたち夫婦が、3歳の娘と生後3ヶ月の息子を連れてドイツに移住してきてから、もう少しで3年が経ちます。乳児・幼児を連れて始まったドイツ生活。日々の生活のちょっとした場面で、ドイツ人から気付かされることがたくさんありました。食のこと、環境に対する考え方のこと、家族で過ごす時間のこと、働きかたのこと。全部が全部を肯定するわけではありませんが、いいと思ったことはどんどん真似しつつ、日本人らしさは残しながら、いいとこ取りをして暮らしています。

その中には、わたしたちが日本で子育てをしていた時に悩んでいたことの解決策もたくさんありました。きっとそれらは、これを読んでくださっているみなさんにも当てはまることが多いのではないかなぁと思います。誰かの何かのきっかけになったらと思い、ここから「食」を軸に1年間のコラムをスタートします。

コラム第一弾は「子どものおやつについて」。このトピックはわたし自身が結構悩んでいたものの一つでしたが、ドイツ人のアイデアを真似したことで今では全く悩むことがなくなりました。ドイツ人は一体どんなものをおやつに食べているのか、そして我が家のおやつ事情もみなさんにも紹介したいと思います。

 

あなたが思う「おやつ」ってなんですか?

おそらく、わたしがドイツに移住するまで「おやつ」だと思っていたものと、みなさんが想像する「おやつ」には、きっと大きな差はないはずです。

お子さんの年齢にもよると思いますが、おせんべいとか、クッキーとか、スナック菓子とかを想像される方が多い気がします。わたしも、娘が3歳になるまでは日本にいたので、周りの子たちはそういうものを食べていたのを見ていたし、わたし自身も市販のおせんべいやポップコーンを買い、砂糖を控えたクッキーやケーキを手作りしていました。おやつというのはそういうもんだという先入観で選択していた感じです。

移住して間もなくスタートした娘の幼稚園生活。先生から、お昼寝後のおやつ用に「スナック」を持たせて!と指示がありました。日本にはおせんべいがあるけれど、こっちでは何がいいんだろう、と悩んだ挙句、ドイツでは定番のスナック「プレッツェルやクラッカー」を持たせることにしました。一応砂糖が使われていないもので…。娘も「お友達に分けてあげたよー!」と喜んで帰ってきたので、あぁ良かったと。

2週間くらい経ち、ふと気になって「他のお友達はどんなおやつを持ってきてるの?」と何気なしに娘に聞いてみたところ、まぁびっくりする答えが返ってきたわけですが、これがわたしが今まで悩んできた子どものおやつ問題から解放されるきっかけとなりました。

 



ドイツの子どもたちはどんなおやつを食べているのか。

娘が教えてくれたのは、みんなはおやつに「野菜、果物、パン」を食べているよということ。

「……。」

いわゆるスナック菓子を持たせていたわたしって、一体…。リアルに数秒止まりました。そりゃ他のお友達も喜んでクレクレ言うわけです。

というか、この2週間、先生はどんな思いで見ていたのか?なんで注意してくれなかったのか?なんで私も先生に確認しなかったのか?娘も娘でなんでもっと早く教えてくれなかったのか?もう恥ずかしいったらありゃしない。

「ドイツでは子どもが食べるスナックと言ったら、野菜や果物、砂糖が使われていないパンが基本よ!これ、入園の時にもらったでしょ?」と、先生に一枚の紙を見せられました。

その紙には、「スナックは、お昼寝後に食べる補食であり、スティック野菜やナイフなどを使わない食べやすい果物、パンにバターとハムやチーズなどを挟んだものが適当」と書かれています。もちろん、わたしはそんな紙はもらっておらず、先生には「ごめんごめん!」と謝られましたが。

まぁ、よく考えてみたらそうですよね。大人にとってのおやつって「楽しみ」として食べる場合がほとんどだと思うのですが、子どもにとってのおやつはあくまでも「補食」なので、特別なものを与える必要はないというのは理解できます。

なるほど。そして、ごめん、娘。



「みんな果物と野菜を食べている!」

そんなすったもんだがあった後、街中や公園で、他の家族をよく注意して見るようになりました。それまでなんで気が付かなかったんでしょうか。みんな洗っただけの果物に、切っただけの野菜をタッパーから出して食べています。バターもジャムも塗っていない、かたそうなドイツパンをかじっている子もいます。

また別の記事でも書く予定ですが、ドイツ人ママに聞いたら、おやつに野菜や果物をたっぷり与える利点も見えてきました。これも目からウロコだったので、またシェアしたいと思います。

ということで、それ以降、我が家のおやつは「果物多め、少し野菜」が定番となり、あれこれ悩む生活から解放されることとなりました。



甘いものは、特別な時のおたのしみ。

かといって、ドイツの子どもたちが甘いお菓子を全然食べないのかと言われたらそうではありません。夏はしょっちゅうアイスを食べているし(ドイツ人は子どもも大人もみんなアイスが大好き!)、誕生日やイベントの時は、小さい子でもチョコレートやグミ、ケーキやマフィンなどを喜んで食べています。お友達の誕生日会に呼ばれれば、お土産にはお菓子をたくさんもらって帰ってくるし、クリスマスの時はドイツ人のご近所さんからこれでもか!という量のチョコをもらいます。

ドイツに来るまでは、そういう類のおやつを一切与えてこなかったので、最初はたまにのそれすら嫌だったのですが、特別な時だけ甘いものを楽しむ習慣があるならそれにならおうかな…という気持ちになり、もらったものはちょっとだけ食べていいよ、のルールを決めました。

チョコレート1〜2粒だけあげる、グミの小袋1個はあげる、みたいな感じで、もらったものを全部食べさせることはありませんが、1〜2粒あげればとても喜んで食べています。あくまで、わたしたちのお財布からは、チョコやグミなどのおやつは買わないけれど、もらった時だけのお楽しみだよ!のスタンスにしています。

わたしが日本に帰ることになったら、どんなおやつを選択するか。

ここまでで、我が家はドイツ人にならって、野菜や果物をメインのおやつにしているのは分かっていただけたと思うのですが、それはわたしたちがそれらが豊富に手に入るドイツにいるから…というのは否めません。特にフルーツは種類も豊富でお手頃価格なので、ドイツにいる恩恵を受けているなぁとひしひし感じています。

同じことが日本でできるかと言われたら、そうではないわけで。日本には日本の食べ物があるし、ドイツにはドイツの食べ物がある。それを考えた上で、わたしがもし日本に帰ることになったら、子どもたちにどんなものを食べさせるだろうか、と考えてみたので、参考になったらいいなと思います。



まずは、おにぎり!ドイツでパンが「スナック」になるなら、おにぎりだっておやつになりますよね。そもそも「おやつ=補食」なので、それを考えるとおにぎりが一番適しているんじゃないのかな?という気がします。新潟出身、もちもちのコシヒカリで生きてきたわたしとしては、塩おにぎりなんて最高のごちそう!十分子どもたちの胃袋は満足すると感じます。ドイツでは、美味しいお米になかなか出会えないので、日本にいるみなさんがうらやましいなぁと思います。



時間がある時は、さつまいもをスティック状に切って、少量の油でカリッと焼いて、塩を振ったものをあげたりするのもいいなぁと思います。これは、ドイツでもたまにやっています。おいしすぎて、我が家では子どもに負けじと親が食べていますが。

もちろん、ドイツの子どもたちにならって、トマト、きゅうり(うちでは味噌も一緒に)パプリカニンジンも食べてもらいましょう。そして季節のフルーツもたっぷりと。

ゆで卵もおすすめです。タンパク質も取れるとても栄養価の高いおやつだと思います。平飼いの卵だとなお良し。一個50〜70円くらいすると思いますが、オーガニック大国ドイツでも、ビオの卵はこのくらいの値段です。適正価格!

あとは、フランスパンもいいと思います。スーパーの棚に並んでいるフランスパンではなく、ぜひ信頼できるパン屋さんで購入したものを。原材料を丁寧に教えてくれるパン屋さんがいいと思います。国産小麦粉のものだと嬉しいですね。
ちなみにフランスパンは、「小麦粉、イースト、塩、水」だけで作れます。食パンに比べて原材料がシンプルなことが多い分、個人的には安心感があるし、菓子パンよりも噛みごたえ食べごたえがあります。おいしい無塩バターをぬり、良質な天然塩をふって食べると格別です。うちの子どもたちも大好きなおやつの一つです。 そして、無添加のおせんべいや、たまには手作りのクッキーやパンケーキも。


ゆっくりゆっくり引き出しを増やしてみては。

日本だと、子どもが喜びそうなおやつがたくさんある分、誘惑がたくさんあると思います。目移り気移りもするだろうし、今まで甘いおやつやスナックを食べてきた大きいお兄ちゃんお姉ちゃんだと、おにぎりや野菜やフルーツをおやつにすることは、ハードルが高いかもしれません。でも、まだまだ小さいお子さんなら「お菓子=おやつ」の認識を変えることは可能だと思います。子どもは思ったよりも短期間で慣れてくれます。

と言っても、お父さんお母さんの認識的にも「おにぎり=スナック」が定着するまでは時間が必要だと思うので、まずはお父さんお母さんがおやつにおにぎりを食べて「うんまー!」という姿を見せてみるとか、曜日で決めてみるとか、週末だけはクッキーやケーキ、スナック菓子を食べられる特別な日にするとか、お友達と一緒の時はオッケーにする!といった家庭ごとの決まりを作ってみたら、意外とすんなり「おやつ」の選択肢が増えて行くような気がします。

みなさんのおやつの引き出しが一つでも増えるきっかけになったら嬉しいです。

写真:島崎慎也


 

島崎ともよ
TOMOYO SHIMAZAKI


料理家。家族思いのシンプルでナチュラルな食を提案するサイト『LIFEとFOOD』主宰。“食は暮らしの一部”を基軸に、日々のレシピや子育ての気づきなどを発信する。2017年よりベルリン在住。

おいしい よみもの

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はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。