島崎ともよ
「やっぱりオーガニックがいいの?」

連載2回目となる島崎ともよさんのコラム。
今回はオーガニックについてお話を書いていただきました。

 

やっぱりオーガニックの方がいいの?

私が「オーガニック」に出会ったのは、今から15年前。当時、アメリカの大学に留学していた時でした。その時からすでにアメリカではオーガニックグローサリーが普通にあって、時々興味本位でのぞいてみては「オーガニックって体にいいのかなぁ。それにしても高いなぁ」と、20歳前後の留学生にはそれはそれは程遠い存在だったことは今でもよく覚えています。


そこから10年近く経ってから、実際に自分のお財布から日常的にオーガニック食品を購入するようになるわけですが、そんな生活を6年ほど続けてきて気づいたことを書いてみようと思います。オーガニックって、ちょっと小難しいテーマになりがちなので、あえてさらりと。何かみなさんの気付きになったら嬉しいです。

 


オーガニックってどんなイメージ?

オーガニックといえば、農薬や化学肥料を使っていない「安心安全な食べ物」とか「おいしい!」と捉える人もいれば、「高い」とか「胡散臭い」などと思う人もいたり、人それぞれだと思います。その中でも、ポジティブに捉えて日常的に取り入れている人の多くは、自分や家族の健康のために選択しているような気がしています。


私は、オーガニック=安全とか、オーガニック食材に変えたら健康になれる!みたいな視点で捉えて食生活をガラリと変えた派なのですが、オーガニック大国ドイツに来たら、その視点で見ている人が意外と少なくてびっくりしました。



・オーガニックが体にいいかは分からないけど、私たちの子孫が暮らしていく地球を守るためにオーガニックの食品やプロダクトを選ぶという人


・オーガニックと言ってもピンキリだし、オーガニック栽培をしている隣の畑から農薬が飛んでくることもある。だから多くのオーガニック認証なんて信用していないけど、環境のために有機栽培をする農家さんのことは積極的に応援したいという人

これは海外出身の友人達と話していた時に出てきた意見の一例ですが、環境保護とかサスティナブルな未来の実現のためといったような、社会のために!でオーガニックを捉えている人や、食と並行してエコにも興味を持っている人も多くて、こっちの視点が大きくかけていた私には、とても大きな学びになりました。

不自然なものは、環境のためにも体のためにもいらないよなぁと思うと、オーガニックっていいなぁと思います。私には子どももいるから、彼らの未来のことを考えると、環境保護の観点からオーガニックを捉えることも大事だなと思います。でも別の側面から見てみると、絶対にオーガニックがいい!とは言い切れないなぁと思うことも正直あります。



ビオ vs 天然

一つの例を出してみます。


ドイツのスーパーではどちらも普通に売られているオーガニックのスモークサーモンと、天然のスモークサーモン。

名前だけ見るとオーガニックの方が良さそう!と、ドイツにきてからはずっとオーガニックのスモークサーモンを選択してきました。でも調べてみると、実はオーガニックの方は養殖だったのです。与えられているエサがオーガニックのもので、抗生物質やワクチンを使わず育てられた鮭、ということでした。



オーガニックのエサを食べ、お薬も使われずに育てらたけど、管理下におかれて過ごしてきたサーモン。広々とした海で、荒波に揉まれながら生き抜いてきた天然鮭。

この二つのスモークサーモン、実は味が全然違います。天然ものの方が身が締まっていて弾力があり、鮮やかなオレンジ色をしています。ビオの方は、色は若干薄く脂が多い印象です。


人によって味の好みもあれば、良し悪しの判断はいろいろあるので、一概にどちらがいいということではないのですが、オーガニックという言葉につられずに、中身をみたら感じることはないかな?と思うのです。オーガニックの方が絶対にいいとは言えないなぁとハッとした出来事でした。

※天然の水産物には青い「MSCマーク」が表示がされています。MSCは、ロンドンに本部がおかれる国際非営利団体で、豊かな海を守るため、水産資源と環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業(サスティナブルシーフード)の普及に取り組んでいます。もちろん、日本にも事務所があり、まだまだ少ないですがMSCマークが付いた商品も販売されています。天然物をお探しの方はぜひ参考にしてください。


心は健康か?

知り合いに、オーガニックが大好きで食事にとてもこだわっている人がいました。ですが、残念ながら心が不健康でした。農薬や添加物が許せなくなってしまったことが原因で、自分にも他人にも厳しくなってしまい、健康のためにオーガニックを選んでいるはずなのに元も子もなくなっている、そんな状態でした。

安全だと言われているオーガニックのものを食べていても、心が元気でなかったらそれに意味はあるのだろうか、と個人的には思います。

オーガニックのものじゃなくても「おいしいね」と言いながら、笑顔で食事を楽しめるなら、そっちの方がよっぽど幸せなんじゃないかと思うのです。
実際に、毎日添加物たっぷり!そんな食事でよく長生きしたね!と思う人もいるし、食や健康にとても気をつかっていたのに、なぜそんなに早く…という人もいます。

そういう場面に出くわすと、やっぱりオーガニックが絶対にいい!とは言い切れないなぁと思うのです。



まとめ

オーガニックのものとそうじゃないものを比べた時に、どちらがいいの?と言われたら、不必要なものを使っていないオーガニックの方がいいと思っています。そして、私たちの健康のこと以外にも、環境のことや次世代のことを考えたら、私個人としてはオーガニックがこの先どんどん広がっていくことを願っているし、生産者の方がもっともっと潤って、それが農産物や製品に還元される循環が産まれたら幸せだなと思います。

ただ、オーガニックという言葉にとらわれずに、いい商品を見極める目は持っていた方がいいよ、と感じています。オーガニックと名前がついていなくても、よく見たらこだわって作られているものって意外と多くあります。特に日本は、海外に比べてオーガニック認証を取るのが気軽ではないので、表示をつけるのが難しいと言われています。成分表示の見方を知ったり、良し悪しを見極められるようになることで、いい商品にたくさん出会えるようになるはずです。

そしてオーガニックに関係なく、食を楽しむ心とか選ぶ心を大切にしつつ、出来る限り生産者の愛情がこめられたシンプルで安心できる食材で、みなさんの食卓に「おいしいね!」が生まれたらいいなぁ、と思います。




島崎ともよ
TOMOYO SHIMAZAKI

料理家。家族思いのシンプルでナチュラルな食を提案するサイト『LIFEとFOOD』主宰。“食は暮らしの一部”を基軸に、日々のレシピや子育ての気づきなどを発信する。2017年よりベルリン在住。

おいしい よみもの

おいしいとありがとう
つくる人とたべる人
出会い、めぐり、ひびきあい
わくわくする未来へ

はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。