【特集連載】レンバイって何?
Honey bee /佐野裕希さんvol.2
「考えが違ってもいい、集まって話す面白さ」

レンバイについて、その成り立ち、メンバーを紐解く連載「レンバイって何?」。「Honey bee」の佐野裕希さんvol.2では、農家や八百屋も世代によりオーガニックの捉え方が変化してきた話、そしてレンバイが始まろうとしていたコロナ禍の空気に話が進みました。


写真:レンバイ開催時の佐野さん。窓際のこの場所が定位置です。

どんな野菜を消費者は求めているか

佐野さんはここ最近の変化として、こんな話を聞かせてくれました。

「今までは、オーガニックの野菜を取り扱う大手販売グループの方が、品揃えを安定して用意できて有意な部分があった。でも最近は、大手でも夏に野菜がなかったり、届いた野菜の状態が良くなかったり、不満を感じた人たちが僕らのところに戻ってきている感じがあります。



品数は少なくても、今は玉ねぎが収穫されない時期、じゃがいもがない時期、と“野菜がない時期もある”ということも理解されるようになって、『ここで買える野菜は美味しいし、しっかりしてる、もちがいい』など、そっちの価値を重視されるようになった感じですね。

大手になると、合理的にしようと思って分業で仕事を分けるので、野菜がいつどのように育てられてどう届いているのか、全体を知ってる人たちが現場にいなくなっちゃってるんで。大手を批判したいわけじゃなく、組織としてどうしても出てきてしまう問題というか。現場の人も大変だと思います」。



結果的にオーガニックという世代の農家さん

少し前の世代の農家さんと、最近の農家さんたちのスタイルの変化についても話は進みました。

「自分達の世代より少し上の世代(50歳前後)は、2011年の震災以降に、これまでの暮らし自体を考えていかないと……と問題意識を持った世代だと思います。

(補足:農業の世界で言うと、環境や人に負荷をかけない農業や生き方について、改めて立ち止まって考え、実践してきた世代という意味合い。)

僕らの世代(40代)や自分より若い世代(20代〜30代)は、そこをまた一周して、半分そういう価値観に触れてはいるけれど、『想いだけでは畑を続けていけないんじゃないか』というギャップから、反動でビジネスっぽい農業をする人たちが増え始めた印象ですね。


写真:佐野さん提供

僕よりも若い世代の人たちは、不景気な時代に生まれ育ち、どう収入を得るのかっていう事をめっちゃよく考えてるなと思います。

その人たちはオーガニックがどうのっていう感じじゃないんですよね。また、年間を通して多品目のものを作るとか、自給自足的なところにもそこまで興味はない感じで。

思想が先にあるのではなくて、農薬や化学肥料を使わないで済むなら、費用的な意味でも使わないでいいんじゃないかっていう合理的な感覚を持ってる。結果的にオーガニックになっている、みたいな。ビジネス的にある程度しっかり安定的に量を作れて販売もできる農家さんが増えたかな、という印象です。


写真:佐野さん提供

僕自身も自然農をやってみたこともあって、何回も挫折を経験してきたんで。どっちの両端も見てきた中で、ビジネスライクな合理的な方法を否定もできない。

僕は、どういう農業スタイルで農業をするかっていうことも大事だと思うんですけど、どう地域と関わっていくのか、どういう人間関係を作っていくのかとか、そういうところがめっちゃ重要な気がしていて。

思想を持ってやっていたとしても、周りに理解されていないとか、地域の中では孤立してる状態では、続けていくことが難しく、実際に、ほとんどの人たちが辞めていったのを見てきたので。せっかくやってきたことも世代間の共有が途切れてしまっていて。

だから、ビジネス的に安定してやれる農家さんもいた方がいいと思って、そういう人たちも応援したいなっていう部分もすごくあったし、一時期はそういう農家さんの方が付き合いが多かった時もあったんです。

ただ、ビジネスライクにできる人達が、次の世代のことをどう育てていくのかなど、その辺りをどう考えているのか分からないと思うことはあって。

とはいえ、次の世代の事も構ってられないぐらい、ビジネス的に自分の食いぶちをしっかりする事に重きを置いた農家さんが増えているのは、時世的に致し方ない部分もあるんですけどね」。


写真:レンバイInstagramより

世代が違う者同士が集まる意味

そして、コロナ禍に入り、レンバイ準備会の話が持ち上がった2022年初めの話へ。

「時代的に、生き方を見つめ直した出来事も、ビジネス的なことを追求していくやり方も、ぐるっと一周回って。もう1回、再スタート的な位置に来たなっていうのはあったと思うんですよね。

ちょうどその頃、コロナがあっていろんなものが崩壊し、これからリセットされるっていう雰囲気もあった。

レンバイの準備会の話が出たのは、ちょうどそんなタイミングでした。

コロナが始まって、人が集うこと自体にみんながビクビクしていた時期に、八百屋や何人かが集まって話をしたんですよね。

心理的にも、肉体的にも、金銭的にも、みんなが疲弊していた状態やったと思うんですよ。丸一年、会って話をする機会がないままだった時期で、皆がどんな生活をしてたんやろうと、気になってたと思います。

だから会えるかなっていう状況になって、とりあえず集まって話をしてみようってなりました。


写真:レンバイInstagramより

その頃、五ふしの草の榊原さんが奈良のお店以外に、大阪に店を出していたのも大きかった。何かオーガニックの取り組みを大阪でやってみるんやったら最後じゃない? みたいな話は元々あったんですよ。

ーオーガニックカルチャーが、関西の中でも特に大阪で根付きにくい、という課題意識があったという事ですか?

「そうですね。それでいうと僕はいまだに大阪では根付かんと思ってる。でも、それでもいいんちゃうかなと思ってる部分もあるんですよね。

少し上の世代の五ふしの草の榊原さんやオガクロの出口さんたちが関西でオーガニックがどう根付くか目指してきていた事と、ちょっと違う視点で見てもいいんじゃないかなって思ってるのが自分達の世代。世代が違う者が一緒に何かをできるっていうことが、むしろ面白くて。

思ってることが違っていても、集まること自体がむしろ大事なんじゃないかなって。

コロナ禍で、僕自身で新しく何かをチャレンジするっていう状態でもなく、何かずっと気持ちが湧いてこない状態やったんで、体力も気力もむしろ有り余ってた。


写真:レンバイの時間に一息入れるオガクロ出口さん(左)と佐野さん(右)

八百屋同士が同じ場所で、顔を合わせて対面販売する、意識しあえる場所って今までなかったんですよ。

お客さんと対面して話せたり、出店者同士が喋ったり、色々話を共有できたりする。終わった後もまた来週があるから、常に周りを意識している状況がある。

何かを盛り上げていくとか、何かを伝えたいとか、もっと販売するとかよりも。会って話をするっていう、単純なことかもしれへんけど、そういう方がいいんやろうなと」。

こうしてレンバイ準備会が始まり、八百屋以外のメンバーも加わっていきー。次回vol.3に続きます。

【特集連載】レンバイって何?は、「編集部だより 食と台所」に随時アップしております。こちらからご覧いただけます⇨ 

レンバイの最新情報はInstagramでご確認いただけます。
アカウント @o_renbai

 

文章:木田
(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)

食べることは好きでも、料理への苦手意識は拭えず。だからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践! 仕入れ先やお取り引き先の皆様から伺うお話にはいつも学ぶことばかりです。難しくならないように、お伝えすることを心がけています。

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