2024.1.12
【特集連載】レンバイって何?
Honey bee /佐野裕希さんvol.1
「歯科技工士から移動販売の八百屋になるまで」
レンバイについて、その成り立ち、メンバーを紐解く連載「レンバイって何?」。第4回目は「Honey bee」の佐野裕希さんのことを紐解きます。
この連載も、残すは佐野さんの回とフードオーケストラの回で終了となります。
佐野さんは、時代の変化やレンバイメンバーの世代の違いも敏感に感じ取りながら、レンバイという場所の特性や可能性を話してくれました。まずは佐野さんが八百屋になるまで、そしてレンバイに参加する前までのことをご紹介します。
八百屋カーで野菜をお届け
大阪和泉市在住の佐野さんは、店舗を持たず、八百屋カーで野菜の移動販売をしています。
以前は「tsutaebito」という屋号で活動、「この10年くらいの自分の動きがミツバチのイメージに重なって思えた」ことから、2023年に「Honey bee」という屋号に改名し、日々あちこち飛び回っています。
泉州や河内地域の小規模農家さんの野菜を中心に、毎日直接農園に行き、新鮮な野菜を仕入れて販売しています。
フードオーケストラの店頭で販売している野菜も、毎週木曜日は佐野さんから仕入れています。
歯科技工士から転身
八百屋になる前は歯科技工士として働いていた佐野さん。そこから転身した理由は何だったのでしょう。
「歯科技工士の世界にもセンスがある人間とそうでない人間っていうのがあるんですよね。僕は美術的なセンスは全くなくて、うまく隙間を埋めるのが得意だった。ある意味でごまかしが上手いんです(笑)。
今の八百屋の仕事も、農家さんと消費者の間をつないだり、ある意味隙間を埋めているような感じで。見過ごされそうなことを拾い上げる事が好きなんですよ。共通項をそんな風に捉えてます」。
ー野菜に興味が移ったきっかけは?
「元々は妻がオーガニックやマクロビなどに興味があって。今は全くそういうところからは離れて違う仕事をしているんですけど。逆に自分の方がハマっていった感じですね。
最初は有機栽培や自然栽培の農業をやってみたものの、各所で『農業の世界は厳しい、やめといた方がいい』と言われ、目指すべき農業のスタイルがイメージできず。
2010年頃、街の一角で野菜を販売していたおじいさんから引き継ぐ形で、野菜の販売を始めました」。
お店を持ってみたものの
その後、おじいさんから引き継いだその場所だけでは人が集まらないことから、移動販売を始め、その後、泉大津市に空き店舗を見つけてお店を持つことに。約2年半ほど店舗を構えていたそう。
「その頃は妻とも一緒にお店に立っていました。途中からは高校の同級生と共同でやるようになったんですけど、いつも売り上げはギリギリな感じで。この頃が一番八百屋としては厳しい時期でしたね。
パチンコ店から店前で女性客ウケを狙って野菜販売のイベントをするから来てほしい、と呼ばれることも。店側が野菜を全て買い取ってくれるから収入源にはなったけど、自分の気持ちが微妙で(苦笑)。
そのために、顧客のニーズに合わせたお店の仕入れとは全く別に、沢山仕入れに走り回ったり。本来やりたい方向じゃない事をしてでも、身銭を稼がないと厳しい状況でしたね」。
お店を持って一番しんどかったのは、これまで付き合いのあった農家さんの所に頻繁に行ける時間が減ったこと、と振り返ります。
「農家さんと会えない時間が重なると距離ができてしまう。じっくりお話する時間もなくなる。そうなると、農家さんのちょっとした変化に気づかずに進んでしまうところもあって、ちょっとこれは厳しいなと思うようになって。
妻にお店を任せたりもしたんですけど、子供も小さかったし、色々うまくいかず。2014年頃から、やらないでいいことを整理していきました」。
そうして佐野さんは、お店を持たず、注文も取らず、宅配もやめ、行動をシンプルにし、できた時間を農家さんの所へ行く時間にあて、ちょっとずつ仕事の内容を整理し、今の移動販売スタイルに定着したそう。
「その頃ぐらいかな、オーガニック業界のちょっとした盛り上がりも手伝って、ちょっとずつうまく回り出した。タイミング的にも良かったんですよね」。
取り扱う野菜について
現在、佐野さんが取り扱う野菜は、農薬や化学肥料を極力使わずに育てられた野菜が中心です。
「自分が食べたいと思えるもの、美味しいと感じるものを販売したい、というのは最初からありました。
オーガニックだからというより、この人が作る野菜だから、と選んでいる感じ。お付き合いのある農家さんが、だんだんと増えてきて。繰り返し繰り返しやり取りをしながら、この人たちが作る野菜を販売したいな、届けたいなと思うようになって。結果的にそういう野菜が中心になっています。
オーガニックだから扱うということではなく、結果的にそうなったというのが、MiKAN屋の山ちゃんや僕たちの世代(30代〜40歳前後)の八百屋の感覚かもしれませんね」。
八百屋カーに来るお客さんの様子
毎週木曜日の午前中は、堺市の諏訪森町にある「古民家再生複合施設 遊」のそばの路上に立つ佐野さん。かれこれこの場所とは10年以上のお付き合いになるそう。
野菜の他に、豆腐や米粉麺など、付き合いのある作り手の商品が積まれている八百屋カー。常連さん達は野菜と共にそれらの商品を手にし「最近は何が美味しい?」など、会話を楽しみながら買い物をされていました。
あるお客さんは
「ここで扱うトマトが本当に味が濃くて美味しくて。トマトソースにして米粉麺に合わせてパスタにしてみたり、ピザのソースに使ったりめっちゃ美味しかったですよ」
と、嬉しそうに話してくれました。
コロナの時期も、今年のような酷暑で日中の販売が危ぶまれた時期も、やめることなく毎週販売を続けてきた佐野さん。
「今年は本当に暑くて、やばいと思いましたけどね。背中に太陽が直撃する場所なんでね。暑いし大変なんですけど、それでも来年もやりますよ」。
頼もしく語る佐野さんですが、近年の夏の気温上昇は、農家さんや大手の野菜を取り扱う同業者達にも影響が出て、消費者の目も厳しくなっている、という話にー。次回vol.2に続きます。
【特集連載】レンバイって何?は、「編集部だより 食と台所」に随時アップしております。こちらからご覧いただけます⇨
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アカウント @o_renbai
文章:木田(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)食べることは好きでも、料理への苦手意識は拭えず。だからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践! 仕入れ先やお取り引き先の皆様から伺うお話にはいつも学ぶことばかりです。難しくならないように、お伝えすることを心がけています。
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はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。