2023.11.3
【特集連載】レンバイって何?
オガクロ出口晴久さんvol.2
「守りたい多様性」
連載「レンバイって何?」。前回のvol.1では、「めぐる八百屋オガクロ」の出口さんが八百屋として独立するまでの話を紐解きました。
今回は、出口さんが大切にしている考えについて、そしてそのこだわりを捨てる日がいつか来るかもしれないと感じた「危機感」について、話は進んで行きました。
小さな八百屋が守るやさいの多様性
ある日のオガクロさんのブログ記事に、こんな内容がありました。
「オガクロのような小さな八百屋の特徴として、少量多品種の個性的な野菜たちを楽しめることがあると思っています。
例えば大手流通だと1日にたくさんの野菜を届けるため、大量のやさいを準備する必要があります。となると大手流通からの注文に対応できる農家さんは限られてくるのは当然で、農業法人や会社化している農家さんが準備することになります。品種によっては大手宅配業者さんが届けている野菜はどこも同じ農家さんから仕入れている、なんていうこともしばしば起こります。
その一方で小さな農家さんたちが育てている量の限られた野菜や、在来種固定種などの個性的な野菜は扱いづらいんです。
その点、オガクロのような小さな八百屋だと1品種1個からでも取り扱うことができます。なのでさまざまな個性的な野菜たちが並ぶことになるんです。
写真:オガクロさんのblog「やさいとせかい」より
(中略)
みんなが違いを知り、違いを認め、理解していくことで人の世界も、野菜の世界も、今よりずっと面白くなるはず!
そんなワクワクする気持ちを発見できる八百屋でありたいなって改めて思います」。
(「小さな八百屋が守るやさいの多様性」より抜粋)
私たちの身の回りでは、均一な形や品質を求められた野菜が並び、季節を問わず手に入ることが当たり前になった生活が通常です。
でも、野菜には当たり前に旬があること。手に入らない時期は、ずっとない状態が続くこと。一つ一つ野菜には個性があること。曲がっていたり色が少し悪かったとしても、食べてみるととっても美味しかったりすること。
そういう本来の当たり前を感じながら、“季節の野菜を手に会話を重ねる八百屋があってもいいよね”とオガクロさんが活動を続けてきたことを、改めて知る機会になりました。
尼崎で野菜を販売しているとよく言われることがあるんだとか。
「“にいちゃん、あんたんとこの野菜高いわー。でも美味しいから買っていくわ”と買っていくおばちゃんがいて。1個を厳選して買う、お金が沢山あるわけじゃないけど、ほんまにいいものを食べたい、みたいな空気感が、やっぱり僕は好きで。だから八百屋の売り上げは鳴かず飛ばずやけど、気持ちはいい(笑)」。
そう目を細めて話す出口さんが印象的でした。
写真:出口さんと話していると笑いが絶えない。
こだわりを捨てる日が
いつか来るかもしれない「危機感」
ただ、農家さんの現実も見てきた出口さんは重く口を開きます。
「知ってる農家さんで、最初は自然栽培で頑張っていた若い農家さんがいてん。売り先もなくて道の駅に出荷してたんやけど、いつも自分とこの野菜だけが残るって嘆いてた。
どれだけ農薬や化学肥料に頼らずに栽培してても、道の駅に出荷するときにそのこと書かれへん。値段は一緒くらいで見た目がしょぼいと全然売れない。どれだけ頑張っても報われないし借金も膨らんで。
ある時『こだわりを捨てて慣行栽培にします』って話に来てくれた。その後、農薬や化学肥料を使ったら、立派なキャベツがどんどんできて、道の駅に出したら飛ぶように売れて。その後『僕はもう自然栽培には戻れません』って話に来てくれた。
その後、人を雇って機械も使ってうまくやってる。それはそれで耕作放棄地になっているような場所をしっかり耕して、栽培して販売してってやってるから。僕らは彼が慣行栽培に変えたことを否定したりはない。
だってね、野菜が売れへんくて、お金がなくなって、死のうか……なんて思う可能性だってあるし。僕らはそういう現実が実はたくさんあるのを知ってる。
今までは僕らのこだわりでこういうやり方をやっているけれど、それでもし家族が路頭に迷うとかっていうことになるんやったら、やっぱりちょっと考え方を変えないといけない時が来るんかな……っていう話はしてて」。
この危機感は、レンバイのスタート時に他の八百屋さんや食に携わるメンバーが感じていたことにも通じました。
次回vol.3「何かが動き始めた日」に続きます。
【特集連載】レンバイって何?は、「編集部だより 食と台所」に随時アップしております。こちらからご覧いただけます⇨
レンバイの最新情報はInstagramでご確認いただけます。
アカウント @o_renbai
今回は、出口さんが大切にしている考えについて、そしてそのこだわりを捨てる日がいつか来るかもしれないと感じた「危機感」について、話は進んで行きました。
小さな八百屋が守るやさいの多様性
ある日のオガクロさんのブログ記事に、こんな内容がありました。
「オガクロのような小さな八百屋の特徴として、少量多品種の個性的な野菜たちを楽しめることがあると思っています。
例えば大手流通だと1日にたくさんの野菜を届けるため、大量のやさいを準備する必要があります。となると大手流通からの注文に対応できる農家さんは限られてくるのは当然で、農業法人や会社化している農家さんが準備することになります。品種によっては大手宅配業者さんが届けている野菜はどこも同じ農家さんから仕入れている、なんていうこともしばしば起こります。
その一方で小さな農家さんたちが育てている量の限られた野菜や、在来種固定種などの個性的な野菜は扱いづらいんです。
その点、オガクロのような小さな八百屋だと1品種1個からでも取り扱うことができます。なのでさまざまな個性的な野菜たちが並ぶことになるんです。
写真:オガクロさんのblog「やさいとせかい」より
(中略)
みんなが違いを知り、違いを認め、理解していくことで人の世界も、野菜の世界も、今よりずっと面白くなるはず!
そんなワクワクする気持ちを発見できる八百屋でありたいなって改めて思います」。
(「小さな八百屋が守るやさいの多様性」より抜粋)
私たちの身の回りでは、均一な形や品質を求められた野菜が並び、季節を問わず手に入ることが当たり前になった生活が通常です。
でも、野菜には当たり前に旬があること。手に入らない時期は、ずっとない状態が続くこと。一つ一つ野菜には個性があること。曲がっていたり色が少し悪かったとしても、食べてみるととっても美味しかったりすること。
そういう本来の当たり前を感じながら、“季節の野菜を手に会話を重ねる八百屋があってもいいよね”とオガクロさんが活動を続けてきたことを、改めて知る機会になりました。
尼崎で野菜を販売しているとよく言われることがあるんだとか。
「“にいちゃん、あんたんとこの野菜高いわー。でも美味しいから買っていくわ”と買っていくおばちゃんがいて。1個を厳選して買う、お金が沢山あるわけじゃないけど、ほんまにいいものを食べたい、みたいな空気感が、やっぱり僕は好きで。だから八百屋の売り上げは鳴かず飛ばずやけど、気持ちはいい(笑)」。
そう目を細めて話す出口さんが印象的でした。
写真:出口さんと話していると笑いが絶えない。
こだわりを捨てる日が
いつか来るかもしれない「危機感」
ただ、農家さんの現実も見てきた出口さんは重く口を開きます。
「知ってる農家さんで、最初は自然栽培で頑張っていた若い農家さんがいてん。売り先もなくて道の駅に出荷してたんやけど、いつも自分とこの野菜だけが残るって嘆いてた。
どれだけ農薬や化学肥料に頼らずに栽培してても、道の駅に出荷するときにそのこと書かれへん。値段は一緒くらいで見た目がしょぼいと全然売れない。どれだけ頑張っても報われないし借金も膨らんで。
ある時『こだわりを捨てて慣行栽培にします』って話に来てくれた。その後、農薬や化学肥料を使ったら、立派なキャベツがどんどんできて、道の駅に出したら飛ぶように売れて。その後『僕はもう自然栽培には戻れません』って話に来てくれた。
その後、人を雇って機械も使ってうまくやってる。それはそれで耕作放棄地になっているような場所をしっかり耕して、栽培して販売してってやってるから。僕らは彼が慣行栽培に変えたことを否定したりはない。
だってね、野菜が売れへんくて、お金がなくなって、死のうか……なんて思う可能性だってあるし。僕らはそういう現実が実はたくさんあるのを知ってる。
今までは僕らのこだわりでこういうやり方をやっているけれど、それでもし家族が路頭に迷うとかっていうことになるんやったら、やっぱりちょっと考え方を変えないといけない時が来るんかな……っていう話はしてて」。
この危機感は、レンバイのスタート時に他の八百屋さんや食に携わるメンバーが感じていたことにも通じました。
次回vol.3「何かが動き始めた日」に続きます。
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はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。