2023.1.6
食道具竹上の廣瀬康二さんに学んだ庖丁との付き合い方
今回のテーマ:庖丁
先生:食道具 竹上/廣瀬康二さん
発見:知ってるようで知らない庖丁の話
庖丁のことを深く考える時間
以前ご紹介した「料理教室 麻」主宰の麻育子さんの教室では、庖丁の切れ味によって食材の仕上がりが変わり味にも影響すること、また道具にも扱い方があることを教わりました。
包丁について学ぶため、庖丁と料理道具のお店「食道具 竹上」で開催されている「庖丁の研ぎ方講習」に参加してきました。
今回は庖丁との付き合い方を中心に「知ってるようで知らなかった庖丁の話」をご紹介したいと思います。
食道具 竹上について
「食道具 竹上」を運営するのは、庖丁コーディネーターという唯一無二の肩書きを持つ廣瀬康二さん。廣瀬さんとお弟子さんが、人と道具との「繋ぎ手」となり、庖丁選びのアドバイスをしてくれます。
庖丁の研ぎ方講習
お店では庖丁の研ぎ方講習も開催されており、一般のお客様だけではなく、プロの料理人や庖丁を扱う方々も噂を聞きつけ学びに来られます。料理を作ることはプロであっても、庖丁の研ぎ方や扱い方を深く理解している料理人は実は少ないそうです。
プロとアマ、基礎は一緒だと考える廣瀬さんから、2回に渡って庖丁の扱い方や研ぎ方について学びます。
1回目
包丁の基本的な研ぎ方の説明と実技練習。
2回目(1回目から数ヶ月後)
個々の研ぎグセを修正しながらより詳しくアドバイスし、実技練習。
「守(もり)」をする
道具というのは、管理するのではなく「守」をする。
道具と同じ目線に立って、心を寄せて見守る。
そうすることで、だんだん道具が馴染み、応えてくれるようになる。
子守りのように、育てていく楽しさがある。
まずはその心が大切。
研ぎ方の話に入る前に、まず始めに廣瀬さんが語られた道具との付き合い方のお話がとても印象的でした。
道具と長く付き合っていくためには、手入れの方法や扱い方を知っておくことが大切なんだなと、冒頭で気付かされました。
鋼(はがね)とステンレス
鋼の庖丁は錆びやすく手入れが大変、というイメージがあると思います。しかし、ステンレスの庖丁と比べると、圧倒的な切れ味、切れ味の持続性、そして耐久性があります。
ですが、日常使いの庖丁として、ステンレスの庖丁は錆びにくく、管理が楽で使われている方も多いと思います。教室では、普段自分が使っている庖丁を持参して参加するので、いずれの庖丁でもその特徴を踏まえてしっかり研ぎ方を学べます。
鋼庖丁の基本的な使い方・お手入れのポイント
鋼の庖丁を錆びさせず綺麗な状態で維持するには、下記のような使い方を意識することを学びました。
・料理の最中も、ふきんで細かく水分を拭きながら使う。(湿っている布巾でも可)
・1日分の汚れは最後にクレンザーで落とし、しっかり水分を拭き取ってから保管する。
・柄(え)の部分に汚れが溜まる。柄もクレンザーで磨くべし。
・砥石で庖丁を研ぐのは切れ味が悪くなってから。(一般家庭では1ヶ月に1回くらい。プロの方は毎日がベター。)
布巾で水分を拭き取っていても、刃の部分が茶しぶのように色づいてくるのは、食材から出るアクが原因なんだそう。1日の終わりにその汚れを取っておくことで、刃を美しい状態に保てます。
アクがうっすら滲んだ包丁
クレンザーで汚れを落として一日を終える
包丁は“柄”が一番汚れている
その事実を知らない人の柄はほぼ100%汚れています。
野菜を絞ったり肉を広げたり、その手で柄をつかみ握りしめて作業をしているのに、柄の部分はさっさっと洗って終わり、になっていませんか?私はお恥ずかしながら、そうでした。
この柄の部分もしっかりクレンザーで洗う習慣を作ると、木製の柄の場合は特にじとっとした感触がなくなります。
クレンザーでしっかり柄を洗った翌日、「あれ?感触が違う」と実感したことに驚きました。
柄の清潔さを保つためにもアク対策のためにも、クレンザー(無添加のものもあります)を導入したい! と心に誓ったのでした。
庖丁の研ぎ方について
講習では、庖丁を研ぐために必要な準備、庖丁の持ち方、庖丁と砥石が交わる角度について、水の量など順番に教わっていきます。
研いでいると出てくる泥(庖丁の鉄粉・砥石の粉)は、それが研磨剤となり刃を削ってくれるそう。
研ぎ終わりのカエリ(金属のまくれ)についてや、仕上げ研ぎを教わり、1回目の講習が終わります。
こんなによく切れる! という実演も。
2回目の講習
1回目から数ヶ月経って参加する2回目には、実際に習ったことを自分が実践できていたか、廣瀬さんに庖丁を預けて見てもらいます。
自分の庖丁と研ぎ方を確認される時間は、『あってるかな、ちゃんとできてるかな……』と、とても緊張感が!!
「たった1回の講習で完璧に研げるようになっていたら、私のような存在は必要ないですよ(笑)」と、廣瀬さん。
そりゃそうです!!
それぞれの癖や手入れの方法を廣瀬さんに見抜かれた後は「こうするともっと良い」などアドバイスをしてもらいながら、もう一度研ぎ方を学び直します。
体に馴染んで庖丁の「守」ができるようになるには、時間をかけてやっていくしかない。2回の講習を通して、庖丁の奥深さを改めて実感できる機会になりました。
道具と馴染み、料理を楽しむ
道具の「守」をし、自分の手に馴染んでくることで、料理の時間がさらに楽しくなりそう。そんな学びができてとても良い機会でした。そして、次世代にもその楽しさを伝えられるようになれたらいいなぁ、と改めて感じました。
庖丁について、研ぎ方について、ご興味を持たれた方は「食道具 竹上」に是非行ってみてください。
【食道具 竹上】廣瀬康二さんプロフィール
1970年3月25日京都市生まれ。
1993年
大学卒業後、ワーキングホリデーにてオーストラリアに1年間滞在する。日本食レストランでアルバイトをした時に、日本の庖丁は凄いと気づく。料理人の道ではなく、食材に最初に触れる仕事=庖丁の世界に進むことに。
1994年
京都の庖丁店に入社し営業販売のキャリアを16年積む。
2010年
祖父母が「竹上」の屋号で商いをしていた処、天然砥石(といし)の産地、京都府南丹市八木町に工房を構える。京都の奥地でも、噂を聞きつけた料理人や料理に携わるプロたちが訪れる場所になっていく。
2019年
日本食文化の中心地である京都市内に、厨房を併設した庖丁店をオープン。庖丁と料理道具を購入できる他、庖丁の研ぎ方講習をはじめ様々な料理講座や食のイベントも実施している。
現在
京都食育先生として、小学校・中学校の食育の授業で講師を務めるほか、全国各地で庖丁に関する教室や講演を重ねながら、「食道具 竹上」を運営している。
先生:食道具 竹上/廣瀬康二さん
発見:知ってるようで知らない庖丁の話
庖丁のことを深く考える時間
以前ご紹介した「料理教室 麻」主宰の麻育子さんの教室では、庖丁の切れ味によって食材の仕上がりが変わり味にも影響すること、また道具にも扱い方があることを教わりました。
包丁について学ぶため、庖丁と料理道具のお店「食道具 竹上」で開催されている「庖丁の研ぎ方講習」に参加してきました。
今回は庖丁との付き合い方を中心に「知ってるようで知らなかった庖丁の話」をご紹介したいと思います。
食道具 竹上について
「食道具 竹上」を運営するのは、庖丁コーディネーターという唯一無二の肩書きを持つ廣瀬康二さん。廣瀬さんとお弟子さんが、人と道具との「繋ぎ手」となり、庖丁選びのアドバイスをしてくれます。
庖丁の研ぎ方講習
お店では庖丁の研ぎ方講習も開催されており、一般のお客様だけではなく、プロの料理人や庖丁を扱う方々も噂を聞きつけ学びに来られます。料理を作ることはプロであっても、庖丁の研ぎ方や扱い方を深く理解している料理人は実は少ないそうです。
プロとアマ、基礎は一緒だと考える廣瀬さんから、2回に渡って庖丁の扱い方や研ぎ方について学びます。
1回目
包丁の基本的な研ぎ方の説明と実技練習。
2回目(1回目から数ヶ月後)
個々の研ぎグセを修正しながらより詳しくアドバイスし、実技練習。
「守(もり)」をする
道具というのは、管理するのではなく「守」をする。
道具と同じ目線に立って、心を寄せて見守る。
そうすることで、だんだん道具が馴染み、応えてくれるようになる。
子守りのように、育てていく楽しさがある。
まずはその心が大切。
研ぎ方の話に入る前に、まず始めに廣瀬さんが語られた道具との付き合い方のお話がとても印象的でした。
道具と長く付き合っていくためには、手入れの方法や扱い方を知っておくことが大切なんだなと、冒頭で気付かされました。
鋼(はがね)とステンレス
鋼の庖丁は錆びやすく手入れが大変、というイメージがあると思います。しかし、ステンレスの庖丁と比べると、圧倒的な切れ味、切れ味の持続性、そして耐久性があります。
ですが、日常使いの庖丁として、ステンレスの庖丁は錆びにくく、管理が楽で使われている方も多いと思います。教室では、普段自分が使っている庖丁を持参して参加するので、いずれの庖丁でもその特徴を踏まえてしっかり研ぎ方を学べます。
鋼庖丁の基本的な使い方・お手入れのポイント
鋼の庖丁を錆びさせず綺麗な状態で維持するには、下記のような使い方を意識することを学びました。
・料理の最中も、ふきんで細かく水分を拭きながら使う。(湿っている布巾でも可)
・1日分の汚れは最後にクレンザーで落とし、しっかり水分を拭き取ってから保管する。
・柄(え)の部分に汚れが溜まる。柄もクレンザーで磨くべし。
・砥石で庖丁を研ぐのは切れ味が悪くなってから。(一般家庭では1ヶ月に1回くらい。プロの方は毎日がベター。)
布巾で水分を拭き取っていても、刃の部分が茶しぶのように色づいてくるのは、食材から出るアクが原因なんだそう。1日の終わりにその汚れを取っておくことで、刃を美しい状態に保てます。
アクがうっすら滲んだ包丁
クレンザーで汚れを落として一日を終える
包丁は“柄”が一番汚れている
その事実を知らない人の柄はほぼ100%汚れています。
野菜を絞ったり肉を広げたり、その手で柄をつかみ握りしめて作業をしているのに、柄の部分はさっさっと洗って終わり、になっていませんか?私はお恥ずかしながら、そうでした。
この柄の部分もしっかりクレンザーで洗う習慣を作ると、木製の柄の場合は特にじとっとした感触がなくなります。
クレンザーでしっかり柄を洗った翌日、「あれ?感触が違う」と実感したことに驚きました。
柄の清潔さを保つためにもアク対策のためにも、クレンザー(無添加のものもあります)を導入したい! と心に誓ったのでした。
庖丁の研ぎ方について
講習では、庖丁を研ぐために必要な準備、庖丁の持ち方、庖丁と砥石が交わる角度について、水の量など順番に教わっていきます。
研いでいると出てくる泥(庖丁の鉄粉・砥石の粉)は、それが研磨剤となり刃を削ってくれるそう。
研ぎ終わりのカエリ(金属のまくれ)についてや、仕上げ研ぎを教わり、1回目の講習が終わります。
こんなによく切れる! という実演も。
2回目の講習
1回目から数ヶ月経って参加する2回目には、実際に習ったことを自分が実践できていたか、廣瀬さんに庖丁を預けて見てもらいます。
自分の庖丁と研ぎ方を確認される時間は、『あってるかな、ちゃんとできてるかな……』と、とても緊張感が!!
「たった1回の講習で完璧に研げるようになっていたら、私のような存在は必要ないですよ(笑)」と、廣瀬さん。
そりゃそうです!!
それぞれの癖や手入れの方法を廣瀬さんに見抜かれた後は「こうするともっと良い」などアドバイスをしてもらいながら、もう一度研ぎ方を学び直します。
体に馴染んで庖丁の「守」ができるようになるには、時間をかけてやっていくしかない。2回の講習を通して、庖丁の奥深さを改めて実感できる機会になりました。
道具と馴染み、料理を楽しむ
道具の「守」をし、自分の手に馴染んでくることで、料理の時間がさらに楽しくなりそう。そんな学びができてとても良い機会でした。そして、次世代にもその楽しさを伝えられるようになれたらいいなぁ、と改めて感じました。
庖丁について、研ぎ方について、ご興味を持たれた方は「食道具 竹上」に是非行ってみてください。
【食道具 竹上】廣瀬康二さんプロフィール
1970年3月25日京都市生まれ。
1993年
大学卒業後、ワーキングホリデーにてオーストラリアに1年間滞在する。日本食レストランでアルバイトをした時に、日本の庖丁は凄いと気づく。料理人の道ではなく、食材に最初に触れる仕事=庖丁の世界に進むことに。
1994年
京都の庖丁店に入社し営業販売のキャリアを16年積む。
2010年
祖父母が「竹上」の屋号で商いをしていた処、天然砥石(といし)の産地、京都府南丹市八木町に工房を構える。京都の奥地でも、噂を聞きつけた料理人や料理に携わるプロたちが訪れる場所になっていく。
2019年
日本食文化の中心地である京都市内に、厨房を併設した庖丁店をオープン。庖丁と料理道具を購入できる他、庖丁の研ぎ方講習をはじめ様々な料理講座や食のイベントも実施している。
現在
京都食育先生として、小学校・中学校の食育の授業で講師を務めるほか、全国各地で庖丁に関する教室や講演を重ねながら、「食道具 竹上」を運営している。
食道具 竹上
HP:https://kyototakegami.com/
店舗住所:京都市下京区黒門通高辻下ル杉蛭子町238-2
TEL・FAX:075-802-3378
営業時間:10:00~17:00
文章:木田(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)食べることは好きでも、料理に苦手意識があるからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践。仕入れ先やお取り引き先の皆様から伺うお話にはいつも学ぶことばかりです。難しくならないように、お伝えできるように心がけています。
おいしい よみもの
おいしいとありがとう
つくる人とたべる人
出会い、めぐり、ひびきあい
わくわくする未来へ
はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。