生産地を訪ねたら、もっとこのお茶が好きになった話


フードオーケストラで取り扱いのある、滋賀県・中川誠盛堂茶舗の「近江赤ちゃん番茶」の生産地へ行ってきました。こちらの番茶は、カフェインがほとんどなく、香ばしさと甘みが特徴の番茶です。フードオーケストラのスタッフが子供も大人も安心して毎日飲みたい美味しいお茶を探して、3年前に出会い、それからずっと飲み続けています。
 

番茶ってなに?
そもそも番茶の由来は、一番茶と二番茶の間に摘まれた「番外の茶」から番茶になった説や、三番茶、四番茶など遅く摘むという意味の「晩茶」から変化した説など、さまざまのようです。ほうじ茶とも違うの?と思いがちですが、ほうじ茶は番茶などを原料に焙煎したお茶のことなのですが、北海道ではほうじ茶のことを番茶と表現する地域もあるんだとか。
番茶は地方ごとに多様で、自家用を目的に各地の伝統的製法で作られていて、酸味の強いものや、燻した香りが濃いものなど、個性が際立っているものもあります。苦手意識を持たれている方もおられるかもしれません。
こちらの近江の赤ちゃん番茶はその点、クセがなくて優しく飲みやすい日常づかいしたい番茶です。さらに、どういう魅力があるのか、ご紹介したいと思います。

 

中川誠盛堂の近江赤ちゃん番茶
 

  

良いこと尽くめの春番茶
一番最初にお問い合わせをした時、電話口で中川武社長自ら赤ちゃん番茶の魅力をじっくり説明してくださり、お話に引き込まれました。
番茶は9月~11月にかけて刈り取る秋番茶と、一冬越して2月~3月の厳冬期に収穫される春番茶があること。赤ちゃん番茶は滋賀県の中でも寒い地域で冬を越した「春番茶」のみを使っているのが他と違うこだわりだということ。2月〜3月に収穫される春番茶は茶葉が厚く丈夫で味が濃く甘みが感じられ、カフェインがほとんど抽出されないこと。収穫前の冬季は害虫が発生しないため農薬が必要なく安心して飲めること。良いことずくめだけれど、その反面収穫量が非常に少なくて入手が困難なお茶だということ。
学ぶことばかりのお話を伺えたことで、時期を見て、現地の空気を感じながら商品を理解したいという思いが募り、「茶畑を拝見しながら赤ちゃん番茶について詳しくお話を伺えませんか」と取材を申し込みました。快く了承してくださり、2月下旬に滋賀県大津市の店舗へ伺いました。


 

マニアックなお茶好きが集まるお店
JR大津駅から徒歩5分ほどの場所にある「中川誠盛堂茶舗」さんは、163年前の安政5年に創業され、長らくこの地でお茶を振る舞われてきた老舗茶舗です。店頭にある焙煎機からは香ばしい香りが漂い、店内には京都の茶筒専門店の開化堂初代が作られた年季の入った茶筒や、昭和時代に使われていたお茶の保存箱とともに、滋賀のお茶が沢山並んでいます。


 

「当店は一つの畑からお茶を作るシングルオリジンの日本茶を置いています。様々な畑から寄せ集めて作るお茶ではないんですね。日本茶の世界では珍しいことで、それで知ってくださった方がわざわざ遠方からもきてくださるんです」
そんなお話を伺いながら、一番茶の煎茶、二番茶の紅茶、三番茶の赤ちゃん番茶を順に振る舞ってくださいました。この順番でお茶をいただくことで、お茶の違いを感じられる体験ができ、茶器とともにお茶を愉しむ贅沢な時間を味わえます。(店頭訪問を強くオススメしたいです!)

 

 写真:緑色の茶葉が鮮やかな煎茶。

 

煎茶と番茶は葉っぱの大きさが違う
番茶との違いをお伝えするために触れておくと、5月に収穫される一番茶は、日本人にもっとも馴染みのある「煎茶」と言われるお茶です。煎茶は収穫後に蒸す、揉む、乾燥、火入れ、という作業が行われ、お茶の葉が細かく、茶葉の色も注がれたお茶の色も緑色をしています。
一方、赤ちゃん番茶の製法は、蒸した後に揉まずに乾燥させて大きな袋に保存され、出荷の前に店頭の釜で炒るという特殊な製法で仕上がっています。揉まれていないため葉っぱの形が残っていて、炒った後は茶色い色味をしています。



写真:大袋に保存されている乾燥された茶葉。
煎茶の茶葉より、ずっと葉っぱっぽい。

 


写真:この釜で1日100kg炒るそうです。
今何を炒っているか札がかかっています。赤ちゃん番茶の手書き文字が素敵です。

 

写真:綺麗に茶色く炒られた茶葉がツヤツヤしています。 

 

朝宮地区の茶畑は圧倒的に土壌が豊かな場所
お店でお茶を振る舞っていただいた後は、赤ちゃん番茶の原料となる茶畑を目指し朝宮地区に連れていってくださいました。大津市内から車で4〜50分山手に向かった朝宮地区は、香り高い風味のお茶が味わえる産地としてお茶愛好家にも知られています。


元々は琵琶湖の湖底だった場所が隆起した地域ということもあり、土壌の豊かさ、持っているポテンシャルが圧倒的に高いことに加え、寒暖差が激しい地形のため、お茶が育つ環境としてとても適しているんだそうです。土の中にたくさん埋まっている層になったこの石がこの土地の特徴です。

 

 

 

本物のお茶を届けたい
「春番茶にカフェインが含まれないのは、寒い時期に葉っぱに含まれるカフェイン成分が根元まで降りていくんです。寒すぎて虫も出ないし、栄養分が蓄えられる。いいことずくめなんですよ。美味しい不味いは自然のものだし年によって変わります。でも、本物を届けたい思いがあります。だから私たちは収量が少なくても春番茶にこだわって赤ちゃん番茶を作っています」。

 


なんだか、中川社長から繰り広げられるお話がどれも面白くて、へー!という声ばかりあげていた気がします。その土地に適した生物が環境に合わせて育ち、農薬を使う必要もなく栄養分を蓄えながらじっと冬に耐え抜き、安心な素材のまま私たちに恵みをもたらしてくれている。その恵みへの有難い気持ちが、茶畑を前にふつふつと湧き上がる機会となりました。
これまで美味しくて愛飲していた赤ちゃん番茶でしたが、より一層おすすめしたいものとなりました。是非皆さんも、日常づかいに赤ちゃん番茶をお試しください。


《赤ちゃん番茶のおいしい飲み方》
それはもう、水出しが一番!!
茶葉に多く含まれる「ポリサッカライド」は、体脂肪の燃焼、血糖値や血圧の降下、糖尿病の予防などに効果があると報告されているそうで、カフェインやタンニンもほとんど抽出しないことから、赤ちゃんやご高齢の方、病気療養中の方にも大変良いお茶と言われているそうです。茶葉を水で浸してじっくり出すことで、熱を加える時よりも成分が保たれるそうです。



●水出しの場合
水1リットル対して番茶を17~20グラム程度入れます。一晩(約6~7時間)そのまま浸しておきますと、翌朝には完成。お好みにより電子レンジ等で少し温めてお召し上がりください。

●急須
番茶7g~10gを急須にいれ熱湯を注ぎ、1分ぐらいしてからお飲みください。

●やかんでの淹れ方
約2リットルの沸騰したお湯に、約20~30グラムの番茶を入れ火を止めしばらくたってからお飲みください。煮出しますと、番茶本来の香りを失いますのでご注意ください。



 


中川誠盛堂茶舗

〒520-0043 滋賀県大津市中央3-1-35
<アクセス方法>
JR大津駅から徒歩約5分、京阪島ノ関駅から徒歩約5分
大津I.C.から車で約5分。

 

文章:木田
(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)

食べることは好きでも、料理に苦手意識があるからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践。日々のしごとの中で見つけたこぼれ話をコラムにします。

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