ありがとんぼ農園へ 味噌作り体験レポ

今回のテーマ:自然農法で作られた大豆と麹を使った味噌作り
先生:ありがとんぼ農園/岡村康平さん
発見:楽しい空気は発酵食品に伝わる



 笑いの絶えない味噌作り体験

「ありがとんぼ農園」の岡村康平さんは、兵庫県朝来市和田山町で、農薬も化学肥料も使わない農法を様々に組み合わせて、お米や大豆や野菜を作られています。


そんな自家製の大豆と米麹で作るお味噌「ありがとうみそ」は、とってもコクがあって優しい味で美味しいんです!



現在、フードオーケストラのオンラインストアと店頭でも販売しているこのお味噌。

味噌作りが体験できると知って、2023年2月にフードオーケストラチームで参加したレポートをお届けします!


 
真面目な顔でユーモアを交えて解説をされる岡村さんのお話はとにかく面白い。

「発酵食品は作っているときの雰囲気が出ると思っています。楽しい雰囲気が大事なんですよ」と、話す持論の数々に、引き込まれていきます。

自然栽培で作物を作っていることも「そんなに難しいことではない」と飄々と話す岡村さんですが、詳しく方法論を聞いていくと、知恵と工夫と手間の集積で実現されていることが分かってきます。

そんな岡村さんの味噌がどのように作られ、また大豆がどんな畑で育つのか、レポートします。



【味噌作りに使う材料について】


大豆
農薬や化学肥料不使用で作られた自家製のもの。


農薬や化学肥料不使用で作った自家製のお米を蒸し、生の麹菌を加えて作る自家製の米麹。


鉄窯と薪でじっくり焚き上げて作られた五島列島の「手塩」。 (フードオーケストラでもお取り扱いしている、優しい甘みを感じるお塩です)

【味噌ができるまでの年間スケジュール】

6月27日の前日 [種まき]
毎年この日には100%雨が降る。その時を見計らって種をまくんだそう。

10月10日前後 [枝豆ができはじめる]

11月下旬 [大豆になりはじめる]
葉が黄色くなって大豆になっていく。北風がピューピュー吹いて乾燥した後、ようやく収穫。脱穀し、大豆とガラに分ける。ガラは次の年の土づくりに利用するため、1年以上置いておく。

2月〜 [味噌作り]
作った後は、11月まで熟成させる。



 【いよいよ体験スタート!】

①薪で大豆を蒸す

2日間給水させた大豆を鉄釜にいれ、薪で蒸します。蒸された大豆はツヤツヤぷりぷり。味見させてもらうと・・・美味しいー!


 

②臼と杵で大豆を潰す

岡村さんの曽祖父母が農家さんに作ってもらった臼(うす)と、古民家から譲ってもらった欅(けやき)の杵(きね)で、大豆を潰していきます。

しっかり給水して茹でた大豆は、柔らかく潰しやすくなります。臼は分厚くくり抜かれていて、杵はしっかりとした重みがあり、豆が逃げにくく潰しやすくなっています。道具が理にかなっていることを体感しました。

とはいえ、私たちは岡村さんのようにスムーズに潰せません。道具を使いこなせるようになるにも、月日とセンスが必要なようです。

 

岡村さんの味噌は、大豆がそのままひょっこり大豆の姿で残っているのも特徴です。その理由も自然な理由でした。

「大豆は全部潰し切らず、頑張りすぎないでいい。発酵食品は、作っているときの雰囲気が出ると思ってます。楽しい雰囲気が大事なんです」。

こうやって、終始力を抜きながら楽しい雰囲気で味噌作りが進んでいきます。



③自家製麹と塩を混ぜる


仕入れた生の麹菌を自家製のお米に振りかけて、米麹を作ります。2日前に仕込んでくださっていたこの米麹、手を入れると温かい! 固まった部分をほぐします。


 

そこに塩を加えます。塩は、五島列島のこだわりの塩です。

 



この時点で、水を加えたら塩麹に。豆を加えると味噌になります。

60度以上あると麹が死んでしまうので温度管理は注意が必要です。


 

余談ですが、兵庫県朝来市は、雲海に浮かび上がる竹田城が「日本のマチュピチュ」と称され有名な場所です。

 

雲海が出るくらいなので湿気も多く、天然麹菌が自然にある地域だそうです。そのため写真のような稲麹(黒く見える部分)ができ、これは「発酵しやすい麹作りに適したお米」という意味合いにもとれるんだそう。



 

④豆玉づくり 

ペースト状になった大豆に大豆の蒸し汁を加え、米麹と合わせます。

 

 

手のひらで丸めて「豆玉」を作っていきます。粘土遊びみたいで大人も無心になる時間です。

 

 

⑤豆玉を保存容器へ

 

保存容器の中に、豆玉を投げ入れて、整えます。投げ入れるのは空気を抜くため。でも、これもほどほどに頑張りすぎず。

 

投げ入れた豆玉は平らに整えていきます。これを繰り返します。

 

 

⑥酒粕で蓋をし、メッセージを添える

 

平らに整えた一番最後、岡村さんは酒粕で蓋をすることでカビの発生を防ぐ方法を取られています。酒粕は、かつてお酒づくりを教えてもらったという壷坂酒造のものを使用されています。

 

その酒粕部分に、各々に愛情を込めて文字を書き記し、この日の味噌作りは終了です。発酵が進んで11月に完成するまで楽しみに待ちます。



 
【どうやって自然栽培で作物を作るのか教えていただきました】

田んぼを作る前に麦を植える話

麦が植る畑を見ながら、麦の話を聞かせてもらいました。麦は一本あたりの根っこの量が、11,200kmくらい根を張るそう。そのため、植えるだけで根っこが土を耕すような効果が出るとか。

麦は根を張る力によって雑草を抑える効果もあるため、種を蒔いた後は草取りをしなくても収穫できる優れもの。


 

さらに、麦の収穫後に田んぼで米作りをすると麦の根の力で雑草が生えにくく、それによって稲を大きくさせるんだそう。

 

「だから、田植えをしたら米ができちゃうんです。『できちゃった農法』ですよ(笑)」。


 

岡村さんは川の水から肥料をもらえると考え、田んぼに川の水を利用しているそう。和田山の美しい自然環境がなせる技です。

 

そうやって自然の力を使いつつ、様々な工夫を凝らして作物を育てています。


 

大豆とお米の一つの繋がり

 

大豆は収穫した後、ファンをかけて乾かし、機械にかけてガラ(莢と茎)を取り外します。そして、そのガラも決して無駄にしません。

 

1年以上かけて、夏から冬、そして春になるとガラはふかふかの土に変わり、それをお米の苗床の土にするんだそう。


 

「うちの味噌が美味しいのは、大豆のガラがお米作りに生かされ、そうしてできたお米を麹にしているから。お米と大豆が一つの繋がりがあることで、さらに美味しくなる。

 

大豆の収穫時にコンバインで刈ったら早いんだけど、あえてガラを残して土に変えて。ガラは一年かけて小さくさせます。カブトムシが全部食べて、土に変えてくれるんです」

 

こんな風に、岡村さんの畑に来ると、自然の循環が当たり前に感じられます。


 

有機農法からスタートしつつ今に至る

 

岡村さんも最初からこの方法論で作物を作っていたわけでありませんでした。

 

かつて有機肥料を使う農業をやっていたときは、雑草と虫がたくさん出て苦労されたそう。その後、肥料をやめる農法へ切り替えたところ、収量は多少減っても肥料を買わなくていい分、やりくりできる収量に落ち着き今のスタイルが確立していったとか。


 

機械を直しながら使うことも好きな岡村さん。コンバインやトラクターは新車が600万円するところ、100万円以下で中古で買ったものを直して、修理して、器用にやりくりするんだとか。

 

「家も作るし、味噌も作るし、機械も直すし、一番得意なのは、子作りでね、あはは」。

 

なんて笑いながら聞いていましたが、実は岡村さんが実現されていることって、凄いことだよなぁと後からしみじみ感じました。

 


写真:岡村さんがご自身で建物も内装も作っている「ありがとんぼstation」。完成後はここで味噌作りを行う予定。


環境や作物の特徴をよく理解し、必要以上に負荷をかけず、人間も頭でっかちにならずに無理をせず、知恵を働かせて物事を循環させていく。


これは、農業に限らず自分たちの暮らしの様々な場面でも応用できる考え方で、岡村さんのユーモアたっぷりの話法の裏に隠された「大切なこと」を、沢山教えていただいた時間となりました。


 

採れたてにんじんをお土産に

 

最後に、うっすら雪が積もるにんじんの畑へ。「何本でもお土産に抜いていってください」と嬉しいお声掛けが!ふかふかの土を感じながらにんじんを収穫させてもらい、この日の体験は終了となりました。




オンラインストアで販売中!

こうして2023年11月に出来上がったフードオーケストラ仕込みの味噌を、オンラインストアと店頭で販売しています。

手前味噌になりますが、美味しいです! コクがあって、お味噌汁の中から大豆の粒がコロンと現れた時は、思わず笑みがこぼれる、気持ちが明るくなる味噌に仕上がっていると自負しております。

どうぞご利用ください♪(フードオーケストラ仕込みの味噌が終了した後は、通常の「ありがとんぼ農園のみそ」に切り替わりますのでご了承ください。)

ありがとんぼ農園の味噌



ありがとんぼ農園 岡村康平
兵庫県朝来市和田山町出身。愛媛大学農学部卒。農業歴22年目。有機農法からスタートし、現在は炭素循環農法など、農薬も肥料も使わない農法を様々に組み合わせ、独自の方法で農業を行なっている。インスタグラム:arigatonbo

 

文章:木田
(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)

食べることは好きでも、料理に苦手意識があるからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践。仕入れ先やお取り引き先の皆様から伺うお話にはいつも学ぶことばかりです。難しくならないように、お伝えすることを心がけています。

おいしい よみもの

おいしいとありがとう
つくる人とたべる人
出会い、めぐり、ひびきあい
わくわくする未来へ

はじめまして! 安心できる、おいしい食品を選りすぐってお届けするオンラインストア、フード・オーケストラです。育み作る人と食べる人は、深呼吸するように、つながり、めぐるもの。しあわせで、おいしい音が、途切れることなく明日も明後日も響いたらいいなと思う。正直で、安心できる、おいしい食品を選ぶことは、作り手や子供たちの、わくわくするような素敵な未来をひらいています。私たちが毎日できる、小さくて、大きな力。日々のくらしに無理なくしっくりとくる、おいしいものやうれしいものを、私たち自身の感動を忘れることなく新鮮な目で選び、みなさまの食卓へとお届けするオンラインショップを目指します。