【特集連載】レンバイって何?
MiKAN屋/山崎雄司さんvol.1
「飲食業から八百屋に興味が移るまで」

レンバイについて、その成り立ち、メンバーを紐解く連載「レンバイって何?」。第3回目は「山ちゃん」という愛称で皆に親しまれている「MiKAN屋」の山崎雄司さんのことを紐解いていきたいと思います。

八百屋を初めてまだ数年
MiKAN屋ができるまで

飲食業界に約10年いた山ちゃん(写真↓左端)と「相方」の大坪がくさん(写真↓右端)の二人で、2019年7月より「MiKAN屋」の活動はスタートしました。

農薬化学肥料不使用の野菜や有機栽培の野菜を中心に、はじめは間借りや宅配で販売を開始。2022年10月に東大阪市に店舗を構えました。

そこに、店頭での販売や調理を担う後藤美紗さん(写真↓中央)が加わり、現在3名でMiKAN屋を運営しています。


写真:MiKAN屋Instagramより

「MiKAN屋」という名前の由来は、「近所の子供がおつかいを頼まれても覚えやすくて馴染みがあるものがいいと思って。それと『未完成』というワードも自分たちらしいということで、MiKAN屋になりましたね」とのこと。



どんな野菜をどんなふうに届けているか

MiKAN屋の野菜は、東大阪市、八尾市、羽曳野市など東大阪周辺の農家さんや、奈良や高知など、知り合いの農家さんから仕入れています。

個人宅や飲食店への宅配と店頭販売をメインに、昔から馴染みのある場所やイベント出店などで対面販売をされています。

「うちは、オーガニックや農薬化学肥料不使用の野菜のみ扱う八百屋です、とは言い切っていなくて。仕入れたいと思う『人』ありきで考えています。だから、あえて曖昧さを持たせてるというか。

農家さんとお付き合いをしていく中で、今は使ってないけど、もし農薬が必要なタイミングがきて『散布します』と言われた時に、じゃあ取引をやめます、っていうのはしたくないと思ってて。

とはいえ、たぶん90パーセント以上は、農薬化学肥料不使用の野菜またはオーガニックの野菜です。あとは美味しいかどうかですよね。やっぱりそこは大事だなと思ってますね」。



そう話す山ちゃんが担当するのは、仕入れ、発注、配達など。東大阪市周辺から大阪市内まで、個人宅や飲食店に野菜を届けています。

「1回配達に行って1時間くらい話す人もいますし、注文したお野菜がちゃんと届けばそれでいいという方もいます。野菜のことを詳しく伝えたいというのは僕らのエゴかもしれないんで、絶対にお客さんと話がしたいとは思ってないんですよ。

置き配で届ける人も、まめに連絡をしてきて野菜のことを聞いてくれる人もいますし。毎週『あの野菜が美味しかった』とフィードバックをくれる人もいる。人それぞれでいいと思っています」。

それぞれの希望をやんわり読み取り、押し付けもしない。主義主張を強く持ちすぎないスタイルで細やかな気配りもできるのが、山ちゃんの隠れた魅力なのだと思います。(別に隠してないか!)



ランチモタベレルヤオヤ

近鉄「新石切駅」より徒歩8分ほどの立地にあるお店を訪ねると、女性のお客さんたちが賑やかにテーブルを囲んで過ごしていました。

というのも、お店では野菜や食材を購入できる以外にも、仕入れた野菜を存分に使った「MiKAN屋のウマイヤサイプレート」というランチを楽しめるからです。(水・木・金・土曜のみ)



ランチプレートや野菜を使ったお菓子の調理を担っているのは後藤美紗さん。

旬の野菜を美味しく調理され、料理の説明も丁寧にしてくれます。後藤さんと話すことで、こんな風に料理に使えるんだ、と野菜を納得して買っていくお客さんも多いとか。人柄も温かみのある雰囲気の方です。



そして山ちゃんが「相方」と呼ぶ大坪さんは、元々バンドマンでコミュニケーション能力が高く、楽しませる力に長けた人。ギター教室もやりながら運営に関わり、自分たちの特徴や魅力を少し俯瞰し、言葉で表現できる人です。

取材に行った時は、山ちゃんにインタビューする私たちに「なんでも聞いてやってくださいねー!」と気さくに声をかけてくれました。


写真:MiKAN屋Instagramより

オーガニックの野菜が気になり出した理由

飲食の世界で働いていた頃の山ちゃんは、オーガニックな野菜や食材に特に縁もなく、農に触れるとか、田舎に住みたいとか、「自然」と共にある暮らしには全く興味がなかったそう。ただ、「もうちょっとゆっくりとした暮らしもいいな」と思うことが出てきた時に、今でもお付き合いのある生駒市(奈良県)の農家さんに出会います。

「自分の地元に有機栽培で育てた野菜を販売に来られていて。オーガニック=美味しいってわけじゃないとは思うんですけど、その人の野菜は美味しかったんですよ。それで休みの日に野菜を買いに行くようになって。

その農家さん(50代)は、お母さん(80代)と二人でやっていて、人手が足りなくて大変だという話をされていて。休みの日に行っていいですか?と手伝うようになりました。

写真:MiKAN屋提供 生駒の農家さん

農作業は楽しいけど、自分が飲食業を辞めて農家さんになるイメージは全然わかなくて。

そんな時、手伝いに行く道中で大量の野菜が捨てられているのを目撃して。今思うと捨てられていたわけではなかったのかもしれませんが、その時はもう、捨てられてるようにしか見えなくて。

元々僕は、食事を残すのがめっちゃ嫌いなんですよ。小っちゃい時からなんですけど。なのでその光景を目にして、もったいないし、なんとかなる方法って何かあるんちゃう?と感じて」。

それは、野菜を生産する立場ではなく、流通に興味が沸いたきっかけとなる出来事でした。

そして、その時働いていた会社の考え方とも合わなくなっていたタイミングで、同級生を通じて大坪さんと出会い、その後の人生が変化していきました。


写真:MiKAN屋Instagramより

銭湯を経営しているちょっと変わった人が
山崎家を背負う」と言い出した

飲食業をやめようかな、でも食のことは続けたい。と考えてたいた時期、大阪市平野区で当時、銭湯を経営していた大坪さんのことを思い出し、会いに行ったそう。

「同級生の紹介で時々会うようになって。食事に行ったり色々話をしてたら、『いや、もう今の職場を辞めた方がいいんちゃう?』って言われて。

冷静に判断して飲食の仕事を辞めて、自分のやりたいことでちゃんと収益を上げる。茨の道やけど、そっちの方が幸せなんじゃない?っていう話をされて。

今、最優先するのは自分の人生の時間じゃない? と言われて考えるようになって」。

そうして山ちゃんが職場を辞める決心がついたある日、大坪さんに呼び出されます。

「ある時、『俺、山崎家を背負うことに決めたから』って言われて(笑)。彼は銭湯をやっていたから、そっちで自分の給料は取れてるから『お金はとりあえずしばらくいらんから』と。『家庭として、山崎家がちゃんと食える状況を作る』と言い出して。

当時、結婚はしてたけど子供はいなかった時期で。我が家に何度か遊びに来た時、僕と嫁さんが喋ってる感じがすごい良いと思ったらしいんですよ。大坪が僕らを背負うことを決めた理由が、『この2人が幸せでいた方がいいよね』だったみたいで。それで、一緒にやろうとなって」。


写真:MiKAN屋Instagramより

山ちゃんがやりはじめた八百屋業に無償で関わることになった大坪さんは、朝、銭湯に行って掃除をし、あとはスタッフに任せてから八百屋に来る、という生活をスタートさせます。

「周りに『騙されてんちゃう?そんなことタダでやってくれるやつなんておる?』って言われましたよね(笑)」と振り返る山ちゃん。

「根本的に大坪の興味があることは音楽。だけど、人にもものすごく興味があって、まずは“人”ありき。だから人をよく見てますよね。縁もすごい持ってるし。僕らMiKAN屋は人にフォーカスした八百屋とよく話すんですけど、MiKAN屋の中で彼が一番、人に興味のある人間ですね」。

こうして、頼もしい「相方」を得た山ちゃんは、八百屋業を始めるために様々な場所に足を運び始めます。

次回vol.2「2〜3年で辞めない八百屋になるには」に続きます。

【特集連載】レンバイって何?は、「編集部だより 食と台所」に随時アップしております。こちらからご覧いただけます⇨ 

レンバイの最新情報はInstagramでご確認いただけます。
アカウント @o_renbai



 

文章:木田
(FOOD ORCHESTRA ライタースタッフ)

食べることは好きでも、料理への苦手意識は拭えず。だからこそシンプルでおいしい調理方法を教わると即実践! 仕入れ先やお取り引き先の皆様から伺うお話にはいつも学ぶことばかりです。難しくならないように、お伝えすることを心がけています。

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